2017年4月27日木曜日

墓に参る

鳩居堂で線香を買う。青山フラワーで青と白とピンクの花束を買う。セブンイレブンでライターとチョコレートを買う。受け取った地図を手に、不思議な緊張とともに、バスに乗る。17分ほどバスに乗り、よく知ったバス停で降りる。晴天の下、スイスイ歩き、5分ほどでたどり着いた。6年も住んだ土地なのに、こんなところに、墓苑があるなんて知らなかった。地図に「入口のすぐそば」と書き添えてあるのだが、見つからない。あれ?たくさんの新しい墓を見て回る。見知らぬ年配の女性がたくさんの花を手に「どなたかお探し?」と声をかけてくださった。お墓のお掃除をしているらしい。探しているんですけど見つからなくて、と笑って、探す。もう一つの出入口のすぐそば、ぽっかり明るい場所に、その墓は在った。供えられた花はまだ活き活きとしており、線香置場はすっきりと片付けられてある。持参した花を、赤や橙の花の脇にそっと差し入れた。白檀の香りのする線香の封を切り、100円ライター(140円だった)で火をつけようとする。ありゃ、全然つかない。あわあわやっているうちに、数本の線香は折れて、地に落ちた。「オイオイオイオイ、何やってんだ」という声が聞こえるようだった。「ホラホラホラホラ、汚いだろうが!」と舌打ちするのも。なんとか火をつけ、やっと手を合わせる。チョコレート、食べます?と言って、私が食べた。ひんやり濡れた墓石に右手のひらを寄せる。また来ます、と小さく言って、立ったまま、再び手を合わせた。桶の中に余った水を捨てに行く。余るものなのだろうか、水。しっくりこない、墓前での行為。いつか、しっくりくる日が来るようにも思う。そして、墓前での一連の行為がスムーズに行えるようになる時、私は、何かを失うような気がする。


さよなら もう会えない


墓苑を出ると、引越しセンターのトラックの荷台で、若い男性2人が楽しげに昼食をとっていた。どこからか、蜆花の香り。花大根があちこちに咲いている。すぐ先の路地裏から、赤い自転車を外股ぎみにこぐボスがふいっと現れそうな。どわどわっと忘れていた彼是を思い出した。ぼーっとしながら、懐かしい通りを歩いて、「たまーに食べたくなる」と、時どきボスと行った上海家庭料理店へ向かう。主に夜、タクシーで行った、大きな通り沿いにある店である。久々にガラスのドアを開けると、ひいやりと薄暗い。TBSラジオがうっすら流れている。カウンター席には、ご近所に住むおじさんおばさんが一人、一人、と並んでいた。昼の定食は売り切れ。「じゃあ、中華丼でいいわ」隣のおばあさんは言った。私は、海老野菜麺を注文。待つ間、酒瓶のラベルを右端から順に目に入れていく。海老野菜麺、けっこうすぐ出てきた。あー、こういうの食べたかったんだよなぁ、と、ふつふつ喜びが込み上げてくる。ふーふー食べようとした時、湯気の向こうに、ボスが麺を取り分けてくれる姿が浮かんだ。いつも2人以上だったから、テーブル席にしか座ったことがなかった。今は、私一人でカウンターに座っている。しっくりこない。しかし、食べたものは舌を潤わせ、食道をすぎ、胃袋にしっくりと納まっている。現実を飲み込み、路面電車に乗り、駅前の喫茶店へ入り、煙草の煙に巻かれながら、4通、手紙を書いた。

夜、妹に「線香になかなか火がつかなくて」と話したら、「あー、100円ライターだと全然つかないよね。熱いしね。チャッカマン持ってった方がいいよ」とアドバイスを受けた。いっそ、銃型のチャッカマン、探そうか。「お前、趣味悪いね」と苦笑されそうですが。


さよなら もう会えない?




ピクニック(お墓でランチバージョン)  
                  キセル

返事を書きそびれたまま 葉書の中へ
南国みたいなとこで 煙草を吸って笑ってる

あの人も笑ってる夢を 昨日見た
初めて見たんだ 幸福そうだった

遅れたランチを食べながら
関係ないけど途方に暮れる

さよなら もう会えない

電車の窓は一つの映画の様で
小さな墓場に男がランチを食べていた

お墓でランチを食べながら
何を話しているのかな

さよなら もう会えない

体の中で渦巻く矢印の事で
人間みたい 嘘ついて 嘘ばかりついて

お墓でランチを食べながら
灰色の空を迎え撃つ



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