2016年2月15日月曜日

真夜中劇場

「久しぶりに『ワーキング・ガール』が観たい」、そうブログに書いたのを夫が読み、DVDをレンタルしてきてくれた。中学1年生の時、福島の小さな映画館で何かと2本立てで観たきりのはずだが、意外とよく覚えていて驚いた。こんな風に、DVDで後で観れるなんて、当時は思ってもみなかったから(我が家には当然ビデオもなかった)、今よりもずいぶん集中して観たのだと思う。テロの脅威も、天変地異の恐怖も、携帯電話もインターネットも普及していない時代に、のびのびと作られた映画。今回、改めて観てみたら、主人公(メラニー・グリフィス)が田舎娘から都会のキャリアウーマンへ上りつめていく過程で、同僚の女性たちが彼女の足を引っ張ったり、ちっとも妬んだりしないことに驚いた。仕事も恋人も手に入れていくサクセスストーリーでありながら、30代の「ワーキング・ガール」達の友情物語でもあったなんて、当時は思わなかった。でも、メラニー・グリフィスの無自覚な(雑味のある)可愛らしさや声の良さがなかったら、それも、もっと違って感じたのかもしれない。所詮、映画の話でしょ、現実はもっと厳しいでしょ、なんて思ったかもしれない。布団に入ってからも、様々な場面が暗い天井に浮かんでは消えて、なかなか寝付けなかった。映画って、こんなに面白かったんだなぁ。

一昨日は、『クレイマー・クレイマー』を借りてきてくれた。「息子がいる今、観たらどう感じるのか、と思って」と夫。缶ビールとポテトチップも買って、春の気配濃厚な強風の中、バサバサの髪で、にこにこ帰ってきた。22時半。土曜保育でお疲れの息子は20時半に寝てしまっていた。私はいつだったか、深夜のテレビ放映で観たことがあると思っていたのだが、ほとんど覚えていなかった。常に目の縁をイングリッシュローズのような色(鮮やかなピンク)にしたメリル・ストリープ。若いからか、声の印象が全然ちがうのね。映画は息子を寝かしつけるシーンから始まる。「頼むから、夜中に起きないでね」と言い、ひとり家を出て行く用意をする。スーツケースのいちばん上に、息子の小さなTシャツを1枚入れていくのがつらい。そして彼女が去った後、育児に懸命に取り組めば取り組むほど、仕事に支障をきたしていくダスティ・ホフマン。自転車の練習をする息子に「Don't go far!」と声をかけ、夜には、存在を確かめるように抱く。我々夫婦は言葉少なに、それぞれじーんとしながら観終えると「とりあえず、なかよくしていこう」と握手を交わし、息子を挟んで眠った。この日もまた、あれこれと思いがめぐり、息子の薄い柔らかい髪の毛の匂いをくんくん嗅ぎながら、暗い天井を閉じた瞼の裏からじっと見ていた。睡魔はなかなかやって来なかった。

今日は夫も私も公休日。私は息子を保育園へと送り届けると、ヨガへ行き、耳鼻咽喉科へ行き(息子からうつった気管支炎が未だ治らないのである)、その後で、夫が予約してくれたイタリアンへランチに出かけた。2年ほど前から、お店の前はよく通っていたけれども、入るのは今日が初めて。シェフが1人、ホールが1人の小体な店であった。いずれも男性である。狭い店内は女性客でいっぱい。夫とこうして向き合って、ナイフとフォークを使って食事をするのは久しぶりである。照れる。だからなのか、私たちは大学生のように(今の大学生のことは分からないけれども)、映画の話をした。そして、その合間合間には、私たちの息子の話をした。ヨガの後だからか、背筋がよく伸びて、口にしたものが食道を通って胃袋に入るのが分かる。そういう状態で話をすると、とてもbrightな気分である。夫の目を見て、話をしたり物を食べたりした。

暖かな店内とは打って変わって、外は、春の重たい曇天。今にも降り出しそうな空である。息子は風で地をくるくる回りながら移動する葉っぱを見て「かぜ、いっぱい」と表現していたが、ほんとうに。風、いっぱい、である。冷たい風がピューピューと飛び回っていた。THE WHOを聴きながら帰宅。よく冷えた洗濯物を室内に入れ、『スクール・オブ・ロック』(我が家にあった)を観た。夫が淹れてくれたコーヒーを飲み、昨日私があげたバレンタインのチョコレート(ラムボールという名のチョコレート。私が食べたいがためにチョイスした)を食べながら、うきうき観た。ロックを通じて、ジャック・ブラック演じるデューイと子供たちが互いに信頼を厚くしていく様子に(こう書くと、ほんとにツマラない感じ。touchし合うっていう感じ?)、またまたじーんとする。時折、夫の「音楽、ちょっとイイ話」が加えられ… 

以前は、DVDで映画を観るのが苦手だった。どんなに好きなテイストの映画でも、うまく集中できず、最後まで観るのも難しかった。今はなかなか映画館や上映会などへ行くことができないし、仕方なく… という感じもあったのだけれど、最近はパッと集中して観れるようになった。夜、息子が眠った後などに観始め、息子が泣いて起きて一旦中断、それでもノーストレスである。いや、もちろん、映画館でじっと集中して、「ただ映画だけを観る」それが一番であることに変わりはない。映画館で観る映画と、DVDで観る映画。私にとってはやはり別物で、それぞれに楽しめれば、単純に嬉しい。(ちなみに、新聞をはじめ、映画評、映画紹介は欠かさずチェックしているけれど、では今、久しぶりに映画館に行けるとして、私は何を観たいのか、もしくは観るべきなのか、全く分からない。「あ、観たいかも」と軽く思ったとしても、行動には結びつかないのである。以前の私なら、何を置いてでも、観に行っただろうに。)

『スクール・オブ・ロック』が終わると、17時だった。私たちは揃って、息子をお迎えに家を出た。手ぶらで傘を差し、今観た映画の話をしながら。「他に、観たい映画ない?」と夫が聞く。けたたましいサイレンを響かせながら、スピードを上げた救急車が私たちの横を通り過ぎて行った。「あ、きゅうきゅうしゃ!」息子の声色で、思わず救急車を指差す私。「ほんとだ!あー見せたかったなぁ。喜んだだろうねえ」と夫。次は何を観ようかね。『レポマン』とかどうですかね。

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