2016年1月15日金曜日

LET'S DANCE

お前の命が生々と獣の様に踊り上る為めに
命をかへろとすすめませう。

3日ほど前から、息子が保育園でほとんどお昼寝をしなくなった。昼食後30分ほど眠ると、あとはずっと起きっぱなし。夕方を頂点にテンションが上がりまくり、帰宅途中のベビーカーで眠ってしまい、家に着くと大荒れ。誰にだってそうかもしれないけれど、息子には無理強いは効かない。息子の内側の嵐が弱まるのを待つしかない。昨夜も、すべてを拒否して(私に背中を向けて)、固く目をつむり、握りこぶしで泣く息子の背中をさすり、じっと待った。時に、歌が嵐を止めることもある。渾身の、熱唱である。2日間にわたって、風呂前、全裸で洗面器片手に『北風小僧の寒太郎』を何度も熱唱。息子は泣き止み、しまいには「やってきたー!」と合いの手を打った。皆さん。歌の心、伝わりますよ。歌の力、すごいですよ。泣く子も黙りますよ、真剣に歌。

そして今朝方、午前2時半。「おちゃ、おちゃー」と息子に顔を押され、起こされたのである。息子は、私が麦茶を台所まで取りに行く間、泣かずに布団で待っていた。抱っこして飲ませると、一気飲み。あ、熱い。「…ねんね」と言って、ぐったりしている。熱を測ると、39.1度。発熱は久しぶりである。朝まで熱は下がらず、午前中、小児科へ行ってきた。「風邪の症状なし。中耳炎もなし。リンパの腫れも通常。治療しません。でも、明日また来ること」と先生に言われ、帰宅。

今日は夫に息子をお願いして、お隣のショップの方と飲みに出かけるはずだった。あまりに楽しみすぎて、息子にも話していたのだが、もしや。それに、来週のおゆうぎ会の振り付けらしい、膝を屈伸しながら「バブー!」(先生によると「ジャンプ!」らしい)を熱心に自主練していたり、「パトカー」「はじまったー」「しょうぼうしゃ」「きゅうきゅうしゃ」「へい、タクシー」「バス、いっぱい」「ゴードン(機関車)」「おしまーい」などなど、話せる単語が急激に増え、会話できるようになってきたこともあるかもしれない。たいへんだねえ、1才児も。獣から離れて、確実に人間になっていく息子である。そりゃ、熱も出るか。

息子のごきげん乱高下前夜。夫がなかなか帰ってこなかった。午前2時前。あまりにも茶の間がひっそりしているので、いないのだと思い、寝室から夫に電話をかけてみた。すーっと襖が開いて、「ニュース聞いた?」。David Bowieが亡くなったニュースに、心を痛めた17才年下の上司と1杯飲みに行ってきたのだそうだ。布団に横たわりながら、暗い部屋で「自分が死ぬと分かっていて、どういう気持ちで、新しいアルバムを作っていたのかなぁ…」そして、すうっと眠ってしまった。

夫はここ1ヶ月ほど前から、David Bowieの話をよくしていた。それはまるで連載記事のように、朝食時、必ず1エピソード語るのであった。例えば、「tin machineの頃、福岡にDavid Bowieが来たんだけど、深夜番組に出て、地方放送なのに、すごく楽しそうにしていて、ああ本当にいい人だなぁと俺は感動したんだよ」。私は半ば流すようにして聞いていたが、夫は構わずに大きい目玉をきらんきらんさせて(でも目の前の物を何も見ていない、記憶の中の何かを見ているようだった)、話していた。人の名前はどんどん忘れていく夫なのに、よくもまぁ、そんなにいろいろ覚えているものだと、心底感心した。うらやましくも思った。そこに、逝去のニュースである。
夫は今日も変わらず1エピソード話してくれた。息子を小児科へ連れて行く時には「BowieさんのBlackstar靴下履こうねー」と、息子に黒い星柄の靴下を履かせていた。とうちゃんの「熱」を、たまさか君は引き受けたのではあるまいね。David Bowieのあんな曲こんな曲を聴きながら、公休(夫)欠勤(私)欠席(息子)の昼下がりは過ぎていく。

命をかへなさい、すっかりかへなさい
淫らな物、いやしい物、ものうい物、ひそかな物、恐ろしい物
そんな物に血が出る様にしがみついた居た命を
すっかりかへておしまいなさい

お前の命がさつぱりと身綺麗になつたら
清く、高く、まめに公明に楽しげになつたならば
どんなにいいのだらう
さつぱりとかへておしまひなさい

お前の命が生々と獣の様に踊り上る為めに
命をかへろとすすめませう。
(『命をかへる歌』/村山槐多)

『LET'S DANCE』を聴いていたら不思議と、この詩が頭に浮かんで、「命をかへろ」とは、「命が生々と獣の様に踊り上る」とはどういうことなのかな、と考えてしまった。肉体を失ったら、たましいは「生々と獣の様に踊り上る」ことができるかもしれない。そんな光景をひとりで想像して、スーッとしていたら、気づけば、夫と息子は眠っていた。早く熱が引けばいいね。

0 件のコメント:

コメントを投稿