2015年10月20日火曜日

父たる人、母たる人

土曜日は息子の通う保育園と、その母体の保育園の合同運動会だった。雨。先々週、下見に行ったステキな公園ではなく、小学校の体育館で行われることになった。歩いて行くはずだったが、夫が靴下にサンダル履きだったため(雨なのに)、途中引き返し、靴に履き替えているうちに、どしゃ降り。私と息子は雨の中で待たされた。なかなか戻ってこないので、私は地団駄を踏み「もー!もー!」と怒り、ずんずんと家へ戻った。ドタバタ両親を目の前に、しんとおとなしくしているデキた息子。結局、私も長靴に履き替え、レインポンチョを着用。「すごい雨だよ。行かなくちゃダメなの?」とポツリ漏らす夫に、私ブチ切れ。「遊びじゃないんだよ!え!遊びじゃないんだ!」怒りながら問答無用でタクシーを呼び、会場へ向かう(タクシーに乗るんだったら、ポンチョ、必要ないのですが。怒りはいろいろなことを見落とさせますね)。本当は、車で行ってはいけなかったらしいのだけれど、我が保育園の人々は「車できて怒られた」「タクシーで正門に乗り付けて怒られた」「パパが駐車場を探して、まだ来ない」「お便りに書いてあるの知らなかったね」「だって、遠いですもんね。雨だし」。ますます我々、小規模保育組の結束は深まりました。

いつもは19人の園児しかいないのに、午前の部だけでも、0才から3才まで、200人は悠に超える大運動会である。それが保護者、保育園関係者を含めて、体育館にギュウと収まった。園長先生のお言葉、誰も聞いてない。保育主任の注意、誰も聞いてない。会の進行、皆よく分かってない。居場所が足りず、うろうろする大人。誰かを探しに来る先生方。狭い空間を走り回るちびっこ。ぶつかって泣き出すちびっこ… それは、カオス。我が保育園の人々、完全アウェー。「すごい人ですね…」とにかく人数に圧倒され、落ち着かない。そのせいで私は「すごいなぁ」と、うわべだけの発言をしばらく繰り返していた。同じ園の人を見つけると、ほっとして、あははははぁーと気が抜けた笑みを交わし合う。子供たちもそのようで、同じクラスのTくんと息子は、顔を両手で挟んだり鼻を触りあったりして、にこにこ再会を喜び合っていた。Tくんは私の元へもやってきて、だっこーと手を広げる。「うちの子ー」と言いながら、だっこ。後ろでTくんのお母さんがその様子をカメラに収めていた。皆、運動会らしいスポーティーな出で立ちなのだが、私の夫は、スポーティーな服を一着も持ち合わせておらず、ジーパンに「唯一のスポーティーだよ…」と言う厚い靴下。羽織ってきた、まぁまぁスポーティーなジャンパーは内側が激しく劣化していて、中に着ていたTシャツに、夥しいフケのように白く付着していた… ああ… 私も私で、寝巻き同然の、膝が白っちゃけたスエットズボンである。周囲を見回すと、さまざまな「お父さん」「お母さん」がいた。

  • マッシュルームカットにチョビヒゲ、蝶ネクタイのお父さん(奥さんは、ごく普通の「お母さん」)
  • 龍の刺繍が入ったジャージを着る気合が入ったお父さん
  • 「ナントカ部長にその件、話してみたんですが…」とガッツリ仕事の話をしている同僚お父さん2人組
  • 「走れ、⚪︎⚪︎」と書かれた写真入りボードをゴール付近で掲げるお父さん
  • おじいちゃんみたいなお父さん
  • 義理の父母、自分の父母に挟まれて疲れ切っているお母さん
  • ギャルお母さん
  • 民族衣装みたいな重そうなジャケットを着てきてしまったお母さん
  • 家庭や仕事の愚痴をこぼしあい、全く運動会を見ていないお母さん2人組
  • 露出度が高いカットソーを着ている持て余し気味お母さん
  • 運動会らしい服装/しかしちょっとおしゃれしたい、を同時に実現させようとしたがあまり、まったくまとまりがない感じになってしまい、隅で居心地が悪そうにマスクをしてじーっとしているお母さん

etc....

息子は、0才児クラスの競技?、マットの上り下り、輪くぐりに夫と参加。ちなみに、この日息子は、私が彼の似顔絵(鉢巻をして走っている)と名前をマッキーででっかく描いたTシャツを着ていた。我ながら、いいアイディア。Tシャツとおんなじ顔をして、楽しげに参加していた。夫も一応「お父さん」の顔をして、息子を高い高いしたり揺らしたりと奮闘していた。あはは。楽しかったね。

私は、クラス対抗の保護者競技、ダンシング玉入れに参加予定だった。音楽が鳴っている間は踊り、止まったら走って行って玉入れ、また音楽が鳴ったら、元の場所に戻って踊る、というもの。「どんなふうに踊ればいいんですかね」「うーん、ま、できないですけど、たとえばブレイクダンスとかやっちゃったら、ちょっと周りに引かれますよね」「あー」「となると、ゆるやかに揺れている感じですかね」「ヘタウマな感じぐらいがちょうどいいかと」「なるほど」「コサック的な踊りをしてもいいけど」「屈伸が深いときに音楽が止まったら、確実に出遅れますね」などと、前々日からSくんのお母さんと打ち合わせをしていたのだが、何と、時間の都合で中止。なぜか、周りにいたお母さん方から「残念でしたね」と声をかけられた。「あー残念だなぁ。ブレイクダンスの革の手袋を用意してきたんだけどなぁ。フロア湧かせられなくて、残念ざんねん」と、やけっぱちで私は言った。

運動会の後、Sくんファミリーとそっと目配せして、みんなでインドカレーを食べに行った。1才児2人は初めてラッシーを飲み、ナンを、インドカレー(甘口ダール豆のカレー)を食べた。「インドの子供は何才からカレーを食べるんですか」とインド人に尋ねる。「2才くらいから、大人と一緒の食べます」「へー」「ナンはね、赤ちゃんは食べない。おなか、ふくれて、イタイイタイなります」… その横で、ナンをもりもり頬張る「赤ちゃん」2人組… Sくんのお父さん、思わず「先に言ってよ!」。インド人は、Sくんお父さんの気迫に「だ、だいじょうぶね…」と、どぎまぎしていた。

Sくんのお父さんは、Sくんにメロメロである。以前、Sくんの風邪がうつった時も「Sちゃんの風邪なら、本望だよー」と甘い声で言っていた。運動会でも、かっこいい一眼レフのカメラを携え、あらゆる角度からSくんの写真を撮っていた。(カメラを持ってこなかった至らない我々の息子の写真も撮ってくれた。)「今はこの子に夢中。だから高校の友達からバンド再結成しようと誘われても断った(高校時代、卓球台で逆さになりダイエースプレーで髪を逆立ててメタルバンドをやっていたらしい)」、そう言って、Sくんを膝に乗せ、甲斐甲斐しく食事のお世話をしている。Sくんのお母さんは汗をかきながら、もりもりとカレーを食べていた。Sくんのお母さんは、細面の美人さんなのだが、ものすごく大雑把なところがあり、おおらかで魅力的。いつも、みんながサッサッサと身支度をして帰っていく中、私たちはダラダラと保育園に居残って、先生も巻き込んでおしゃべり。Sくんと息子は「かあちゃんたち、ようしゃべるなぁ」と思っているかもしれない。保育園の中で一番仲良しである。

狭い暑い薄暗い空間でも、1才児たちはぐずりもせず、ご機嫌で食事をした。インド人のひとりに、息子を抱っこしてもらったら、とっても大切そうに抱っこしてくれた。「慣れてるのね。子ども、いるんですか?」と聞いたら、「インドに、いる。5才」と、息子をにこにこ眺めながら、言った。息子の向こうにインド人の彼の子供が透けて見えるような気がした。

お父さん、いろいろ。お母さん、いろいろ。その子ども、いろいろ。いろいろがいいね。みんなだいじな誰かの子ども。

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