2015年5月7日木曜日

青嵐

大型連休。ずっとお天気がよかった。午前中に洗濯物を干してしまえば、午後の早い時間には、ぱりっと乾いてしまう。家中の窓という窓を開け放して、畳の上で、息子と転がる。山鳩の鳴き声と、どこからか、かすかに藤の香り。ああ、季節は確実に夏に向かっている。息子の初節句は、菖蒲湯に浸かった。すぐに菖蒲へと手を伸ばすかと思っていた息子は、そーっと手を伸ばし、触れそうなところで、引っ込める。それを繰り返す。未知へのおそれ? お風呂を上がる頃、ようやく自分から葉の部分をつかんだ。固いでしょ、すぱすぱしてるでしょ。緊張した面持ちである。へー、なんか、いいね。いいものを見た。

立夏の6日は、息子を抱っこして、最寄駅の駅ビルの中にあるお茶屋さんへ行った。生仕上げの新茶を買いに行ったのである。生新茶は3種類売られていて、その中から、初倉というお茶を選んだ。これは産地の名前らしい。静岡県島田市初倉。4月25日に摘んだと記されている。おお、フレッシュ。とっても親切な店員さんが、どうぞ一杯と、お試しで淹れてくださった。お湯を入れて40秒ほど。急須をえいやえいやーと回転させながら、茶碗に注ぐ(遠心力でコクを引き出すんだそうです)。ひとくち飲んで「あー、ワイルド。野性味ありますね!」と言ったら、店員さんは「甘みの後に、渋みもあって」と、嬉しそうに笑った。50g買う。家に帰って、茶筒に移そうとしたら、がさつな私は少しこぼしてしまった。こぼれた茶葉を指で集めようとしたら、あれ?湿ってる。指で揉むようにすると、茶葉が水分を含んでいるのがよく分かる。茶筒に入れ、冷蔵庫にそっとしまった。息子は眠っている。上の前歯2本がずいぶん伸びてきた。



と、昨日、ここまで書いて、息子を抱いたら、熱い。発熱。あっという間に40℃。あらら。

「まず最初に、「熱がどんなに高くなっても、熱が原因で死ぬことはない」「どんなに高熱になっても、脳に影響はない」という2つのことを、しっかりと心にとめてください」(『育育児典』(病気)より)

はい。しっかり心にとめています。今日は保育園をお休み、私も仕事を休んで、病院から帰ってきてから、私たちは、ひねもすべったり。がんばれー。熱に負けるな。後方支援として、おっぱいを無制限で吸って良しとします。

それにしても、発熱する赤ん坊って、なんて熱くて重たいんだろう。昼間の家で、じっとり汗ばみながら息子の横にいて、部屋に射し込む光の変化や、影の具合を眺める。誰もいない家って、こんなふうに、しんと息をひそめているんだ。誰も見ていないのに、テーブルの上を明るく照らす陽光、レースのカーテンに映る隣家の庭木の影、車の音、挨拶を交わす声、鳥の鳴き声。私はおっぱいを出して、読みかけの本(『キャプテンサンダーボルト』)を読む。面白すぎて、時間が経つのを忘れ、はっとする。さっきより、影が長くなっている。眠っていた息子が、薄く目を開けてうええ、と言い、私の腕にしがみついて、また眠る。何度も、何度も。ムチムチの両手で私の腕をつかんで、目を閉じる。時々、口がちゅっちゅっと、おっぱいを吸っている口になる。それを見ているうちに、いつの間にか、私も眠ってしまった。

目覚めて乾いた体に、初倉。急須を回し回し。息子には白湯。ごくごくと飲む。大人になるって、たいへんだ。私もこんなふうに育てられてきたのか。発熱する赤ん坊と過ごす時間。体がだるくて、心細くなるのか、あんまーんまー、と涙声で私を呼ぶ。夕方の台所で、なんか、胸が熱い。ごまかすように、茶碗に残った深緑を、一気にその胸に流し込んだ。

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