2014年12月27日土曜日

NEW ME

クリスマスは久しぶりにひとりで表参道へ行った。3、4日前から夫が抱っこしても息子は泣かなくなってきたので、息子を夫に任せて、髪を切りに行ったのである。出産してから、親戚の床屋さんに一度、近所の美容院で一度、髪を切ってもらったが、やはり行きつけのところでなくては。コートのポケットに財布と携帯電話だけを入れて、手ぶらで電車に乗った。いつもは息子をベビーキャリアで抱っこして、おむつや着替えの入った大きなバッグを右肩に、左手には買い物袋を提げている。手ぶらって、やっぱりいい。身軽だと目の玉まで軽くなってしまうのか。やたらとキョロキョロしてしまう。おめかしして待ち合わせをする人たち、プレゼントの袋を抱えたスーツ姿の男性、地図を見ながら何か話し合っている外国人、若い女性のヒールブーツは歪んでいて腕を組む男性にもたれかかるのにちょうどよさそう。

半年ぶりに訪れたTHE OVERSEAは、壁の写真がすっかり変わっていた。前の写真も素敵だったけれど、今は、バストアップのポートレートがずらりと並ぶ。それを軽くなった目で見ながら、おもてを歩いていた人びとのことを思い出す。人間って、なんてかわいらしいんだろう。神さまがいるのなら、きっと人間のことをいとしく思っているだろう。クリスマスにそう思えるなんて、私は幸運だ。担当してくださっているHさんは、私の止まらないおしゃべりにつきあいながら、ささーっと髪を切ってくれる。手に意思があるのではないか。近況を話しながらも私は、髪を切る以上のもてなしを受けている、と感動する。今の私は、単に髪を切るだけなら、どこだって構わないかもしれない。でもここでなら、切った髪の毛の分、古い自分を捨てて、捨てた分だけフレッシュな空気を肺に入れることができる。新しい私はショートカット。あら、似合う。やっぱりここへ来てよかった。Hさんが「赤ちゃんが触っても安心だし、赤ちゃんにも使えるから」と勧めてくださった瓶入りのシアバターも買う。ラベンダーとバジル、2種類あって、双子座A型の美容師さんがふたを開けて香りを嗅がせてくれた。くんくん香りを嗅いだ後、草っぽいバジルの方にした。「いい選択です」、存分のもてなしに感謝して、新しい私は街に出た。 

翌日、私は息子を連れて、実家のある福島へ向かった。東京駅へ向かう途中の地下鉄で息子は泣いた。イヤそうな目で私たちを見るサラリーマンやおばさん。気にするもんか。「電車の中で泣くと、赤ちゃんはどうして泣いてるんだろう、どこか痛いのかなって心配されちゃうよ。だから電車の中では泣かないで。外に出たら思う存分泣いていいよ!」と言うと、息子は泣き止んだ。えらい。そして電車を降りると泣き出した。えらい。大手町の長い長いエスカレーターを上りながら「泣け~もっと泣け~泣いていいよ~」と言うと、さらにこぶしをきかせて大泣きした。下りエスカレーターの人たちが何だろうという目でこちらを見ている。爽快である。いいねえ。地下鉄構内は泣き声がよく響いて清々しい。

どうにかこうにか新幹線に乗り込んで、私たちは福島に着いた(新幹線では、途中から多目的室をお借りして、ちょっとしたセレブ気分)。息子は福島に着いてから夜眠るまで泣き続けた。びっくり。こんなに泣くなんて。母曰く「人見知りだね。早いね。人の区別がちゃんとついているってこと」。息子はあたりをぐるっと見回しては泣く。混乱が伝わってきて、成長してるんだ!という嬉しい気持ちと、何だか妙に切ない気持ち。

夜明け前、障子の外がいやに明るい。日が昇ると、外は白銀の世界。息子をストールで巻いて外へ連れて行く。彼にとっては生まれて初めての雪。白く、冷たくて、明るい。息子はたくさんのwonderを瞳に湛えて、私の腕の中でじっとしていた。何もかもが初めてって、どんな気分なんだろう。息子のちいさな手にのせた雪はなかなか溶けず、5本の指はマッチの火が点る速度で紅く発色した。



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