2014年11月27日木曜日

のろいをかける

以前、映画の仕事をしていた時、名前のない登場人物(通行人A、B、Cのような)に名前をつけることになった。X氏は私に「名前をつけるとは呪いをかけること。いい呪いをかけろよ」と言った。子どもに名前をつける時、そのことがまず頭に浮かんだ。呪い、いい呪い。私は呪術師にでもなったつもりで、天から垂れる一本の糸を掴むように、生まれ出た我が子に名前をつけた。

今日、X氏に会いに行った。会うのは半年ぶりである。X氏は息子を抱っこしてくれた。いつまででも抱いていたいようだった。部屋がとんでもなく暑かったせいか、息子は泣きっぱなしだった。「ちょっとすみません」と私は言って、おもむろに自分のシャツの中に息子の顔を入れた。「ああ、おっぱいって便利」「今、飲んでるの」「はい」「おなかがすいていたんだな。ああそうか」
しかし息子は泣き止まず、ドバドバと今飲んだ母乳を吐き出した。「あらあらすっきりしたね。私、結構おっぱい出ているんだなあ」「そういうことだな」「そろそろ失礼しようかな」「そうか。ちょうど1時間だ。ゆっくりと身支度してあげなさい」
久しぶりに会ったのに、私たちはほとんど会話らしい会話をしなかった。半年前に会った時は、私の大きなお腹を軽く叩きながら「おーい、早く出てこいよ!」と言ってくれた。照れくさいのだ。

迎えに来てくれた夫の車に乗って、私たちは家に帰った。洗濯物を取り込み、夕飯のおでんを仕込んでから、近所の公園まで散歩に出かけた。木の葉の真っ黄色、それから茶色、赤、すこしの緑。落葉を踏みしめながら、冬の夕暮れの空気を肺いっぱいに吸い込んだ。そして数年前、こんな夕方にX氏と公園に行ったことを思い出した。刷り上がったばかりの本をX氏が読む間、私は公園を1周、2周と走らされた。
アパートに戻ると、暗い部屋におでんの匂いが充満していた。ちりっと冷たい屋外からほわっと暖かな室内に入ると、息子はまた泣いた。今夜はぐっすり眠れそうだね。

これから、おでんです。

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